2009.7.1
 
八十路のつぶやき
 
菅 原  努
  74. 3 つの I
 

 

 皆さんは最近の環境問題で、これに対処する心がけとして 3 つの R というのを知っておられるでしょう。

 Reduce 使う量を減らす
 Reuse 同じものを再使用する
 Recycle 再処理してもう一度使う

 実は同じような 3 つの R は色んな分野で言われているのです。ここではそうではなくこの 3 つの R を生かすために大切なもう一つの問題点を 3 つの I で示しているお話を紹介したいと思います。それは;

 Ignorance 無知
 Ideology イデオロギー
 Interest 利益(利害関係)

 です。これを言ったのは、経済学者の Alen S. Blinder で、彼の HARD HEADS, Soft Hearts: Tough-minded Economics for a Just Society(1987) という本に書かれているのだそうです。私はこのことをある論文で知りました。Hard Head 硬い頭というのは保守的な政治家を皮肉ったもので、Soft Heart とは進歩的な政治家を皮肉ったものだそうです。この 3 つの I はそもそも望ましい経済政策のために阻害因子になる重要なものを 3 つの I として示されているそうです。

 私の理解した範囲でこの 3 つを簡単に説明します。Ignorance は複雑な現実を知らずに簡単なスローガンで分かったような気持ちになっていることを指しています。Ideology は今更説明するまでもないでしょう。広く考えれば、もったいないなど「ものの見方」とでもいうことになるでしょうか。Interest は一寸難しいのですが、利害関係と考えればよいと思います。医学者と製薬企業との関係などがその典型的なものです。 企業からの政治献金も当然これに含まれます。

 これらはご紹介したように経済学の分野の話ですが、私の読んだこれを紹介している論文も動物実験に関するもので、経済とは直接の関係はありません。そこで最近皆さんの関心の高い環境問題でも 3 つの R と共に、この 3 つの I にも配慮が必要だろうと考えてご紹介した次第です。政治の話でも環境問題でもいろんな提案や政策について、一度この 3 つの I について問題がないかよく考えてみてください。

 私はこのところ老化が進んだのか、どうもぼんやりして物事をしっかりと考えることが苦手になってきました。そこで自分の頭脳訓練を兼ねて 3 つの I などという奇妙な言葉をご紹介しました。十分に理解してご紹介出来たかどうか、自信はありませんが。

 


Michael Balls: Animal Experiments and Alternatives: Time to Confront Truth and Uncertainty, and to combine Idealism with Realism. Alternative to Animal Testing and Experimentation. 14(1)821-827,2009.

 

 

 
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