2004.6.1
 
八十路のつぶやき
 
菅 原  努
  13. 年寄りにとって自動車は?
 


 私はもう自分で自動車を運転しなくなって久しいのですが、身分証明書のつもりで免許だけは更新を続けています。最近は我々老人は事故を起こしやすいからと免許更新には予め特別の講習が義務付けられています。そう言われてみると確かに反応時間などが延長しているから運転技術も年とともに大分落ちておると言われればその通りと納得していました。この点をもう少し客観的に調べることが出来ないかと、前にも高校生の交通事故の問題を一緒に調べた(財)体質研究会副主任研究員の東 庸太郎君の協力を得ることにしました。そうして入手したのがこれからお目に掛ける統計データです。

交通事故10万人あたりの死亡者数


 ここではいろんなデータの中から自動車運転中の死亡と歩行中の死亡とを拾い出しました。警察は「年を取ると運転が下手になるから運転に気をつけなさい」と言って免許証の更新に特別講習を義務付けています。20歳以下の無謀運転による死亡は別として年齢による死亡事故は25歳から74歳まで殆どかわらず、75歳以上ではかえって減っています。これは多分よほど自信のある人しか運転しないか、年をとると大変慎重になるという事ではないでしょうか。

 それよりも問題は歩行者です。50歳位から急速に増えています。しかもこれは自動車に轢かれる方ですからたまりません。医学的にはこれは丁度平衡保持機能の年齢による衰えに一致します。片足をあげてズボンを履くときにふらふらしだしたら要注意です。はっきりと平衡機能を調べるには閉眼片足立ちをして何秒倒れずに済むかをみればよいのです。年を取るといろんな機能が衰えますが、それには個人差があります。そのなかで一番個人差の少ないのがこの平衡機能だと言われています。勿論年を取って注意力が散漫になったということもあるでしょうが、知らない間に平衡機能が衰えて思いがけないところで、ふらふらとする、というのが怖いのです。八十路のみなさんは十分に気をつけてください。

 自動車を運転するときに自転車には十分に気をつけて大回りして避けるように指導されるようですが、杖を持った老人も要注意です。いつふらふらっと倒れ掛かるかもしれないのです。それにしても警察も運転の技術ばかり問題にしないで、年寄りの歩行者を守ることにもっと力をいれてもらいたいものです。

 

 

 
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