1999.6.10 revised.
 
「環境と健康」 Vol.12 No.2 April 1999
Random Scope

何故ベータカロチンが却って肺癌をふやすのか
 
 

フィンランドで喫煙者を対照にしたベータカロチンによる大規模な肺癌予防の介入疫学研究の結果はベータカロチン投与群の方が却って肺癌のリスクが高いという結果になり、ベータカロチンの癌予防研究を断念するきっかけになった。(本誌Vol.7 No.4 p.137を見よ)そこでは毎日30mgのベータカロチンを摂っていた喫煙者では偽薬群より28%も多く肺癌になったというのである。

ボストンのタフト大学のXiang-Dong Wangらは、ヒトと同じベータカロチンの代謝系を持っているフェレット(白いたち)を用いて実験をした。フェレットにたばこの煙を吸わせベータカロチンを与えると腫瘍で活性の高まるARI蛋白のレベルが異常に高くなることを見出した。たばこの煙によって生じたフリーラジカルがベータカロチンを酸化し、それがARI蛋白の産生を刺激すると考えられる。“いくらたばこを喫っても、人参を沢山食べていれば大丈夫”というのは大間違いである。

Tom
‥‥New Scientist 16 Jan. 1999 p.7 ‥‥