2002.1.28
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第29回(2月16日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
上皮・内皮細胞シートのバリアー機能:
その分子機能と疾病との関連について

月田 承一郎
(京都大学大学院・医学研究科・分子細胞情報学)
 


 水分子、イオン、蛋白質などが細胞間を通って漏れるのを防ぐために、タイトジャンクションと呼ばれる細胞間接着装置が存在する。ここでは、隣り合う細胞間の距離がほぼゼロになるまで細胞膜が近づいており、細胞間をシールしている。さらに、このジャンクションは上皮細胞や内皮細胞の細胞極性の形成・維持にも決定的な役割を果たしていると考えられている。したがって、このタイトジャンクションで細胞間をシールするような機能を発揮する接着分子は、腸管や気管などにおける粘膜バリアーの中心的分子として、また、多細胞動物の血管をはじめとする各種コンパートメントを形成するための中心的分子として、古くからその実体が追い求められてきた。

 我々は、1993年に、タイトジャンクションの接着分子と思われる4回膜貫通蛋白質をニワトリ肝臓から初めて同定することに成功し、オクルディンと名付けた。このオクルディンがタイトジャンクションの重要な構成蛋白質であることが次々と報告されたが、一方でオクルディン遺伝子をノックアウトしてもタイトジャンクションが形成されるなど、タイトジャンクションの謎も深まっていった。我々は、数年前、新しいタイトジャンクションの4回膜貫通蛋白質クローディンを発見し、タイトジャンクション研究に新しい局面を開いた。クローディンは大きな遺伝子ファミリーを形成し、細胞膜間をゼロにまで近づける接着能力がある。ここでは、クローディンの構造と機能についてこれまでに明らかになっていることをまとめた上で、新しく発展しつつある「バリアーの分子生物学」についてクローディンを中心に議論したい。


【クローディンに関する総説】

  • Tsukita,Sh. and Furuse,M. (1999) Occludin and claudins in tight junction strands: Leading or supporting palyers ? Trends in Cell Biol. 9: 268-273
  • Tsukita,Sh., Furuse,M., and Itoh,M. (1999) Structural and signaling molecules come together at tight junctions. Curr.Opin.Cell Biol. 11: 628-633
  • Tsukita,Sh. and Furuse,M. (2000) Pores tin the wall: Claudins constitute tight junction strands containing aqueous pores. J.Cell Biol. 149: 13-16
  • Tsukita,Sh., Furuse,M., and Itoh,M. (2001) Multifunctional strands in tight junctions. Nature Rev. Mol.Cell Biol. 2:285-293
  • 月田承一郎、古瀬幹夫 (2000) タイトジャンクションを構成する4回膜貫通型タンパク質オクルディンとクローディンの発見:Paracellular Pathwayの新しい生理学へ向けて 生化学 72:155-162

 

 
 

 


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