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 平成24年度 事業計画書

 

 

  I  公益事業

   

 1.調査研究事業

   
(1 ) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究
   
 

 平成23年3月11日(金)に発生した東日本大震災と津波によって、東北各地で多くの人命と家屋が失われた。また、これに伴い発生した東電・福島第一原発の事故により、大量の放射性物質が周辺環境に放出され、福島県はじめ東日本各地の広範な地域で高い放射線が観測された。このような中、各地の住民はその健康影響につき不安な状況におかれている。
 (公財)体質研究会は、中国広東省に存在する高自然放射線地域に注目し、1992年以来、中国の研究者との共同研究により地域住民の健康におよぼす低線量放射線の影響調査(疫学調査、線量調査および染色体異常調査)を行ってきた。さらに、1998年より中国とは生活様式、生活習慣が異なり、中国より高い自然放射線線量を示すインド・カルナガパリ地区においても同様な調査を開始した。
 低線量・低線量率放射線の影響研究の最終目標はヒトのリスク評価にある。これらのリスク評価において、現在、最も重要視されているのは広島・長崎の原爆被爆者の調査であるが、これらは高線量率被ばくを対象にしたものであり、現在、問題とされる低線量率被ばくのリスク評価を直接行うことはできない。従って、低線量率長期被ばくの一般公衆を対象とした高自然放射線地域住民の調査は貴重な情報源となりうるものである。
 このような中、2011年、第58回国連科学委員会(UNSCEAR)の会議において、「低線量放射線の健康影響に関する疫学調査」が正式の検討課題として採択された。これに関係するのは、体質研究会が進めている高自然放射線地域の疫学調査であり、また、ロシア・テチャ川周辺の放射能汚染地帯の健康調査である。この決定は高自然放射線地域の疫学調査が国際的に認められたことを示すものであり、国際機関への働きかけの第一歩となるものである。
 このような状況の下、平成24年度は、高自然放射線地域住民を対象としたコホート調査について、放射線線量が高く、調査人数が多いことから、より成果が期待されるインドに重点を置き、調査を実施することとし、引き続きデータの収集と解析を行う。さらに、放射線への感受性が比較的高く、その影響の可能性が予想される白内障およびアローム性動脈硬化症に関する調査を実施する。また、本調査のきっかけとなった中国・広東省の高自然放射線地域における疫学調査については、調査を論文作成に必要な項目に絞るとともに、これらの結果をまとめて論文を作成し、国際誌への投稿を目指す。
 また、2013年4月に予定されている高自然放射線地域住民の疫学研究に関わるUNSCEARへの最終報告書の作成に向けて、これを積極的に支援する。

 

(2 ) 放射線リスク評価に関する調査
   
 

 当研究会は1984年に「放射線リスク検討会」を組織して以来、放射線のリスクに関心を持つ研究者を集め、主として放射線のリスクについて、様々な視点より調査・研究を進めてきた。
 本年度は引き続き放射線のリスク評価に関する国内外の最近情報を検討するとともに、福島第一原子力発電所の事故に関連して、日本における原子力の社会的認識の現状、リスク評価・リスク認識で問題となるリスクコミュニケーションの問題、最近の放射線生物学の成果に基づく放射線発がんのリスク評価などについて調査・検討する。また、近年ますます利用の増している医療被曝を中心とした放射線のリスク評価についても検討とする。さらに、これまで、25年以上にわたり蓄積してきた本検討会での調査結果や成果を集約し、公表するための形式や方法についても検討する。

 

2.アイバンクの運営

   
 

 京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、引き続き本事業年度も次の事業を行う。

 
1)

眼球提供者の登録業務、献眼の受付業務を行う。

2) 登録者を少しでも増やすため次の啓蒙・啓発活動を行う。
 イ.京都・滋賀・奈良地区アイバンク関係機関誌の登録者等への発送
 ロ.京大医学部眼科関連医療機関等へのポスター・パンフレットの設置・ 補充
 ハ.百万遍知恩時で毎月15日に開催される「手づくり市」等での啓蒙活動を4回行う。

 

3.「いのちの科学」の研究・普及

   
 

 従来の医学における治療や予防の研究は、要素還元主義に基づく分析と多数の測定結果によって評価されてきた。しかし、それだけでは解決できない現象が治療や予防の上で見られている。
 そこで、要素還元主義を離れ総合的な立場で、しかも科学的に医療や予防の効果を評価する指標の研究開発を平成10年度から行ってきた。しかしこの立場からでは「いのち」を理解することは困難であるとの反省から、平成17年度から委員を交替し、文系の委員も参加して新たに「文理融合」をテーマにした多面的な「いのち」の科学の研究を行ってきた。しかし、文理の壁は厚く、もう少し思考方法を変え委員も交替し、女性科学者、宗教の専門家(仏教とキリスト教)も交えて、より幅広い「共に生きる」を柱とした「いのち」の科学の研究を21年度から始めており、今年度もこれを継続する。

1) 市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を4回程度開催する。
2) 委員を中心とした例会を5〜6回開催する。
3)

夏休みに子供を中心とした「子供たちと科学を語る」という新しい試みを京都大学博物館と共催する予定である。

4) 季刊誌「環境と健康」の刊行
     「環境と健康」を4回(夏号・秋号・冬号・春号、部数1,000部、各巻120〜160ページ)発行し、内920部は会員及び関係者に配布すると共に、平成18年春号(Vol.19 No.1)から、大学図書館のみならず700館以上ある全国の公立図書館へ、推計人口による全国都市順位表により、人口の多い都市所在図書館の順に最長3年間の寄贈を行っており、これを継続する。
 また80部については、(有)共和書院を発売所として全国の主要な医学系書店で一冊定価800円(税込)で市販すると共に、オンライン書店(Fujisan.co.jp)での市販も継続する。
Vol.25  No.2  を平成24年 6月1日に
Vol.25 
No.3 を平成24年 9月1日に
Vol.25 
No.4 を平成24年 12月1日に
Vol.26. No.1 を平成25年 3月1日に刊行する。
5) シリーズ出版「ともに生きる科学」全6巻のうち第2巻を発行する。

 

 

4.放射線照射利用の促進

   
 

 (公財)体質研究会は「放射線に関する理解を深め、認識を高めることが大切である」という立場から、放射線の利用についての理解をいっそう深めること、さらに、放射線のさらなる利用の促進とその範囲の拡大を図ることにより国民生活の利便向上に資することを目的に活動を展開している。
このような中、2011年3月に発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故は、安全の要件のみならず安全に対する取組みそのものを見直すことを示すことになった。このような状況において、放射線照射をはじめ原子力の利用についての理解を求めることの重要性がさらに増している。
 放射線照射の分野で我々が強い関心を持っている食品照射については、その承認に向けての進展は一時ストップしたかの状況であり、食品照射の有用性と照射食品の健全性についての正しい理解を求める一層の活動が望まれる。
 食品照射以外にも放射線照射技術は工業、医療、農業など多くの分野で使用されているが、その利用の実態は一般には、全くといっていいほど知られていない。これらについても社会の多くの人びとが目を向け興味を持つよう、知識普及に努めることが必要とされている。
 このような観点から平成24年度も引き続き、以下のような活動を進める。

1)

講演会・見学会の開催:放射線照射利用に関する最新情報、特徴ある分野の情報を提供すると共に、一般公衆の放射線照射に関する理解を得ることを目的に、放射線照射に関する知識普及と理解に役立つ情報提供を目指した講演会や見学会を実施する。

2) JAPIニューズレターの発行:ニューズレターを年6回発行し、放射線および放射線照射の理解に役立つ情報を提供する。また、放射線照射に関る幅広い記事を掲載するなど、記事内容の充実を図ると共に、“みんなでつくる機関誌”の立場で、広く原稿を募集する。
3) ホームページの充実:放射線の基礎知識をはじめ放射線照射利用の理解に役立つ情報を提供する。また、JAPIニューズレターを掲載する。
4) 他組織との交流:ONSA、関西原子力懇談会、量子線利用普及連絡協議会など、放射線照射利用に関係する団体、学会、業界などとの交流を深め、連携し、広く情報の収集と活動の広がりを図る。また、講演会、見学会など、他機関との共同開催も検討する。

 

5.その他

   
 

 調査研究等活動の成果を積極的に社会に還元・発信するために、本事業年度も引き続き、ホームページhttp://www.taishitsu.or.jpの維持管理を行う。

 

 II  収益事業等

   
 

 Tの公益事業の実施に伴い、附随的に行う収益事業等として次の事業を行う。

   

1.ナリネ菌製剤等健康食品の発売 

   
 

 (株)ナウカコーポレーションが総販売代理店として市販を行っている、健康食品「ボンナリネ」・「ボンピュアー」・「ビュークレール」・「プレビアスV1」について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続する。

 

2.研究助成並びに奨励事業 

   
 

 本財団の事業目的に適合する研究・調査等を行っている学会や、協会、研究機関等及び個人に対する助成を予算に応じ行う。