2001.4.3
 

2001年4月のトピックス
食の効能普及全国会議の発足

 

設 立 趣 旨

 21世紀の科学の一つのテーマとして「生命科学の振興」が挙げられています。それにつれて21世紀の医療は、治療よりも前に予防、すなわち健康をどう維持し増進していくかという点に焦点が当たってくると思われます。そこでは食と生命現象ことに健康との関わりの科学的探究が、人類の生存にとって極めて重要な地位を占める課題となるでしょう。中でも、食と人の健康との関わりは、今後、益々その重要度を増すものと思われます。

 このように重要な「食と健康」の課題は、解決しなければならない多くの問題を抱えています。

 現在の「食と健康」の研究方向として、(1)食成分の消化・吸収機構、生体調節機能発現機構の解明、(2)人に外挿するための分子・遺伝子・細胞・組織レベルのバイオマーカー(生体指標)の設定、特に、DNA microarray(DNAチップ)の開発、(3)培養細胞レベルや実験動物レベルの食成分の効果を病体モデル動物や人での立証などが計画されています。当然ながら、このような研究開発の推進は、食成分の効果を科学的に証明するためには避けて通れない必要な事項でありますが、その発想は医薬品成分の評価方法を取り込んだ手法にすぎません。

 しかしながら、要素還元的手法を前提とする現在の科学では、前記研究計画の実施に膨大な費用と気の遠くなるような時間が必要となり、これらの成果が現実に実用化され得るのは天文学的に低い確率となることでしよう。また、「食成分」ではなく、未知の多成分の集合体である「食」そのものについては、現在の科学では効果を立証する方法すら考案されていないのが現実であります。即ち、医薬品評価手法等に用いられている要素還元的手法では、食及び食成分の有効性を比較的短期間にしかも経済的な意味で現実的に立証することは極めて困難であるということであります。

 我が国の生活習慣病の増加は、今や莫大な額の国民医療費問題を巻き込んだ社会的問題となっており、直ちに有効な対策を講じる必要のある緊急な課題であります。これに対し、科学技術研究の飛躍的進歩により、食品機能の系統的解析の進展と食品の生体調節機能の解析が実施され、多くの食品成分が人の分泌系、循環系、神経系、消化系、免疫系等に対し生体調節機能を有していることが解明されてきました。人類の財産である食品の機能性を、生活習慣病等の予防・改善に有効利用することにより、多くの社会的問題の解決に多大な貢献が可能でありますが、医薬品評価手法等の要素還元的手法では、食及び食成分の有効活用には限界があります。

 これを打開するためには、新たな食の有効性評価法を早期に確立し、これを基盤とした新たな食の効能を普及推進する法律の制定が不可欠との認識の下、「食の効能普及全国会議」を発足させたものであります。

 食の効能普及全国会議は、菅原努会長が指摘された"食と健康の関係は科学的問題ではあるが、従来の科学的方法では解決できない多くの課題が内在している"ことを受け、1990年に同会長が提唱された『トランス-サイエンス(Trans-science)』的考え方を適用して、医薬品の効能効果評価法に代わる新たな食の効能評価法を確立するための検討を開始することと致しました。

 トランス-サイエンスとは、問題は科学的な課題として提出されたものであるのにも関わらず、その結論を得るに際し、その問題の本質から、通常の科学的方法では実証できないと判断される場合です。そこでは限定的に得られた科学的データしかありませんので、それを用いて、1)証拠十分である、2)かなり確実である、3)ある場合にはそのようなこともあり得る、4)とてもあり得ない、などといった不確定的でファジーな結論でも、これを尊重し物事の決断を促そうというものであります。このようなトランス-サイエンス的な問題に対する対応が一般に認められるためには、まず、科学者間のコンセンサスが不可欠であり、次いで、科学者の提言に対する社会的理解と合意が必要となります。

 食の効能普及全国会議は、この社会的理解と合意の形成の第一歩として今回の第1回講演会(平成13年3月28日東京)を開催することとしたものであり、今後、継続してこのような目的のための講演会や討論会を開催して行くこととしております。

 まず、21世紀における食の新たな効能評価法をともに考えようではありませんか。皆様の奮っての御参加をお待ち申し上げております。

食の効能普及全国会議
議 長 中 嶋 茂 

〒150-0017
  東京都新宿区左門町12番地8号
  NH第5ビル6F601号室


付記:私が10年前に機能性食品をどう取り扱うかの議論の中で提案したことを取り上げてその具体化に向けて活動する組織を作ろうという申し出を受けました。21世紀にふさわしい新しい科学のパラダイムを目指す動きと考えて全面的に協力することにしました。ただ自分の年齢を考えて、先頭に立つというよりは、次々と新しい発想の方が私を追い越して先へと進んで行かれる道を造ることが出来ればと期待しています。(菅原 努)