2006.9.1

             
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リスクと生活

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自動車交通事故のリスク50年(18)
《 各暦年における年齢層別人口10万あたりの全死傷者数の推移 》

主任研究員 武田篤彦


1. 基礎データ

  交通事故統計年報(総務省警察庁、(財)交通事故統計センター、1962年〜2004年、人口10万人当たりの年齢層別死傷者数の推移 = 年齢、死者数、負傷者数、(掲載は不定期))

2. データの検討

 1966年〜2004年の各歴年における全自動車事故の年齢層別死者数と負傷者数の実数および当該人口から求められた、1歳(一部は1歳未満)〜19歳までの各年齢、20歳〜69歳は5歳年齢間隔で、1歳から69歳までの人口10万あたりの死者数および負傷者数を、グラフ化しました。

各年齢間隔についての死者数および負傷者数のグラフ化による一括表示は煩瑣となるため、1966年を筆頭に5暦年間隔で9暦年(1966、1971、1976、1981、1986、1991、1996、2001および2004)を選んで図示しました。図1は上記の年齢間隔における10万人あたりの死者数、図2は同じく負傷者数を示しています。

 

2-1. 各暦年における人口10万あたりの死者数

 図1によれば、高い死亡率を示す年齢層には3つのグループ(I、IIおよびIII)のあることがわかります。各グループの範囲を年齢区分でみると、グループIは(〔1>〕歳〜11歳)、グループIIは(12歳〜〔35〜39〕歳)、グループIIIは(〔40〜44〕歳〜〔65〜69〕歳)となっています。ピーク形成前の年齢層の値と比べたピークの高さ(倍率)は、ピークIでは1966年;5.7、1971年;5.9、1976年;3.2、1981年;8.3。同じくピークIIでは1971年;10.1、1991年;15.3、1981年;13.9、ピークIIIが1971年;3.7、1966年;2.0、1976年;2.0となっています。

 このグループの高値の主役は暦年初期の1966年、1971年と1976年であること、グループ間の谷間がやや高い値を保持していること、そしてそれらはしだいに改善されつつ引き継がれていることがわかります。

 グループIは、幼児が主体、グループIIの主役は二輪車乗用の若者であることを暗示しています。グループIIIのかなりの部分は、次回以降に示しますが「自転車乗車中」および「歩行中」の高齢者における被害の増加に起因しているとみられます。

 


図1 年齢にともなう死者数の経年変化

 

2-2. 各暦年における人口10万あたりの負傷者数

 図2よれば、死傷者の多い年齢層はIとIIの2グループに分かれます。グループIは1歳〜11歳でピークの幅は広く、1971年と1976年の3歳年齢層にわたるピークは9.7倍、このほか1996年、2001年と2004年に、それぞれ5.0倍、3.1倍と3.2倍のピークがあります。グループIIは、年齢(4歳〜〔25〜29歳〕)にピークをもつ、1966年を除いて8暦年のピークのいずれもが20歳にあり、大きい値を示す2001年、2004年、2006年でのピークは、それぞれ19.1倍、18.5倍、21.9倍となっています。この上位3暦年は、ピークII以降の年齢でも比較的高い値を保っています。

 この負傷者の動向を死者の場合と比べると、そこには高齢の死者が構成するグループIIIの見あたらないことがわかります。死者については、暦年初期(1966年〜1976年)の増加傾向は、最近でも改善されていません。これとは逆に負傷者については、最近は暦年初期に比べて微増傾向が認められます。これにはいろいろな要因が関わっているのですが、致死的な事故の増加傾向の影響は否めません。なお、ここには提示を省略しましたが、上記の傾向は各グループの各5暦年平均値に基づくグラフでも、同様の形状を示しました。

 

図2 年齢にともなう負傷者数の経年変化