2004.4.1

             
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リスクと生活

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新しく始めるにあたって

菅 原  努

 このホームページでは1998年から「日常生活のリスク」という見出しで「いろいろな事項についての10万人あたりの年間死亡率」という表を「生活と健康:くらしのなかの長寿学」のなかに入れてきました。これは私達の日常生活のなかで、人はどのようなことでどの位死んでいるのか、ということを知って頂こうとして集めたものです。この表を見られてどんなことに気が付かれるでしょうか。私が一、二のヒントを書いてみましょう。一番上にロシアとハンガリーの国民の全死亡率があります。これが百人あたり1−9人というレベルに当たります。我が国では昭和の初めから25年頃まで相当します。今の年齢では男で60歳代、女で70歳代の死亡率に相当します。もう一つ自動車交通事故死を世界で比較しようとすると我が国のは24時間以内であるのに諸外国のは30日以内になっています。

 このような点も含めて、その集める苦労については来月から随時このページに担当責任者の武田篤彦博士((財)体質研究会主任研究員)にも書いて頂きます。

 この頃は新聞紙上でもよくリスクという言葉を見かけますが、其の意味は必ずしも一定ではないようです。ここでは、最近の統計をもとに人々はどのような原因による死亡の確率がどの位あるかということを推定しようとしています。このような確率による未来予測をここで私達はリスクと呼んでいるのです。これの詳しい意味や、どうゆう役に立つか、どんなときに使うのかと言ったことをこの欄で順次説明していきたいと思います。

 皆さんに大変関心の高い食の安全についても、最近、政府に食品安全委員会というのが作られ、その説明によりますと、新しい食品安全行政としてこの委員会で

* リスク評価(食品健康影響評価)
* リスクコミュニケーションの実施
* 緊急の事態への対応

をするということですが、ここでもリスクという言葉が出てきます。これは我が国も遅ればせながら食品規格の国際組織Codexのやりかたに習おうと言うものです。しかし、これだけでは一般にはどうも意味がよく分からないのではないでしょうか。リスク評価ということがどのようにして食の安全に繋がるのでしょうか。私たち放射線防護に関係して来たものには、このリスク評価とかリスクコミュニケーションとかはなじみの深い言葉です。その経験をいかして皆さんと一緒にこの問題を考えていきたいと思っています。これから毎回話題をしぼって、出来るだけ分かりやすく書くようにつとめますので、ご愛読をお願いします。