1999.9.1

 
 
輝く太陽からの恵み

  遙かなむかし、ビッグバンという大事件がおこり、私たちの住んでいる宇宙が誕生したと、アメリカの天才科学者であり哲学者であるホーキング博士が言っています。そして、誕生した宇宙に満ちみちていた原子は、その中心にある原子核が崩壊や融合を繰り返し、そのたびにたくさんのエネルギーをもった放射線が放出されました。そのため、その舞台となった宇宙には、このとき以来ずっと、無数の放射線が飛び交っているのです。

 私たちの地球は、宇宙を漂う小さな塵や小惑星が集まって熱い火の玉となり、約46億年前に誕生しました。そのときに、金や銀、銅や鉄などの貴重な元素、そしてウランやトリウムなど放射線を出す元素が集まったのでした。

 やがて地球はしだいに冷えて固まり、大雨が降って海となり大気ができて、放射線の飛び交う中で約35億年前に、原始の生命が生まれました。「生命の起原」、すなわち私たちの遠い祖先の誕生です。太陽の中での原子核反応で生じ送られてくる日の光のエネルギーを利用するようになった植物は、地上の炭酸ガスと水を原料としてからだをつくり、私たち動物はそれを利用して自分のからだをつくるようになりました。だから私たちの体は太陽の原子核反応のエネルギーで作られ動いているということができます。

 太陽熱を利用していた原始人が木を燃やすようになり、動植物の化石である石炭石油で作る水蒸気を利用した産業革命につづく火力発電へと、それはどれも、もとは太陽での原子核反応で送られてきたエネルギーのはたらきによるものです。雨を降らせる気圧配置の変化も太陽からの熱によるものですから、雨を集めた川の水を利用するおなじみの水力発電も、太陽エネルギーによるものといえます。太陽熱で生じる風による風力発電、太陽光による発電も同様です。だから、みんな太陽での原子核反応によるエネルギーのおかげだといえます。

 電力の需要が大幅に増えて、これまで発電の主役であった火力と水力では足りなくなってしまいました。そこで頼りになる「助っと」として登場したのが、原子力です。原子核内からエネルギーを取り出すとう点で、火力や水力とは違っています。しかし私たちは、ずっと以前から太陽が原子核反応で生じるエネルギーの恩恵を受けてきたのでした。そういった点から考えますと、私たちが生活で使うエネルギーは、すべて原子核の中から生み出されているのだといえましょう。

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