1999.9.1

 
 
青空は宇宙線に満ちている

  澄みきった秋の大空にまぶしく輝く太陽、それは日本では昔から「おてんとう様」としてあがめられてきましたが、世界のいろいろな民族にとっても、崇拝を集め親しまれている身近な存在です。その太陽から周りに出される光と熱は莫大なもので、1秒間の放出エネルギー量の合計は、地球が受けとる量の60年分あまりに相当すると計算されています。

 太陽の表面でおこる爆発によって放出され地球に到着するのは、光や熱だけではなく、電波、X線などをはじめ、さまざまな種類の放射線もいっしょに降り注いでいます。このようなエネルギーの大きな放射線は「宇宙線」と呼ばれています。

 宇宙線は太陽からだけ出されているのではありません。この宇宙には、地球と同じような星(恒星)が、1億個の1兆倍という無数ともいえる数で存在しています。その星たちの中で大爆発がおこると、そのたびに放射線が出されますから、宇宙には宇宙線がいつも無数に飛び交い、それは昼夜の区別なく地球に降り注いでいるということになります。

 こうしてやってくる宇宙線の一部は、また、地球の上空で空気中の原子や分子と反応をおこして、放射線を出す元素を新たにつくり出します。

 宇宙線は、日本の平均緯度(北緯35度)では、1秒間に数百の割合で、人のからだをとおり抜けています。宇宙線の量は、緯度が低くなるとわずかですが少なくなる傾向があります。

 また宇宙線は高度によっても変化します。その量は海面から高くなるほど多くなり、一般的には1,500m上がるごとに2倍くらいになるといわれています。そのため、富士山の頂上では東京より4倍くらい多い宇宙線を受けることになります。

 さらに、1万メートル上空をジェット機で飛ぶときに受ける量は、地上の20倍程度になるとされています。おもえば、パリやニューヨークなどを目指して多くの人々が、日常に較べてはるかに多い宇宙線を受けながら、10時間を超える海外飛行を元気に楽しんでいるのです。もちろん、乗務するパイロットやスチュワーデスは、乗客より時間的にずっと多くの宇宙線を受けているわけですが、その皆さんはみんないつも健康で、勤務に励んでいるのです。

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