2000.12.2

 
   
 

22.パラダイムシフトの行方は?

 

 

 今まで二回ほどがん予防のことを書いたのは、放射線のリスクも結局がんリスクであるとすれば、放射線防護もがんリスクを増やさない為であると考えたからです。でも残念ながら今のところがんはライフスタイルによるところが大きい事は分かりながら、具体的にがんリスクを減らす簡単な方法は見つかっていないと言う結論になってしまいました。

 では放射線はがんリスクを増やすいろんな環境因子のなかでどんな位置にあるのでしょうか。例えばオゾンホールの出現で太陽紫外線の増加が問題になっていますが、紫外線が1%増えると皮膚がんは2%位増えると予想されています。これは太陽紫外線と皮膚がんの頻度との関係は線量の2乗に比例するからです。放射線の場合は線量の1乗に比例するとして問題にしていますが、増加率は太陽紫外線より低いことがお分かりでしょう。しかも皮膚がんの場合には太陽紫外線が殆ど主役を占めていますが、放射線の場合は自然のがんのほんの一部を増やすだけです。ですからがん予防という立場に立てば放射線などは殆ど役割がなく、他にもっと大きな環境因子があるはずです。

 それでも、放射線はどんなに微量でもそれだけがんのリスクを増やすではないかというのが問題になっているわけです。この国際放射線防護委員会の考え方に対して、いろんな方面から疑問が投げかけられていることを前にお話しました。それを学問的にはパラダイムシフトの呼び声が上がっているがと言いましたが、本当にそれが起こるのか、起こるとすればどんな方向に向かうのか、が残された問題です。本講座でもそれを示したいところですが、残念ながら未だその答えは得られていません。ただ言えることは、放射線が先ずDNAに傷をつけ、それが突然変異をもたらし、その突然変異ががんにつながるという今までの考え方(直接作用説)に対して、放射線は間接的に突然変異率を高めその為に自然のがんの頻度が高まることになるという間接作用説が有力になってきていると言うことです。これから先の最新の進歩については来年から構想をあらためてお話したいと思います。

 いよいよ21世紀を迎えますが、放射線防護の分野ではこの機会に構想を新たに体制を作り直そうという機運が拡がっています。国際放射線防護委員会でも2005年を目途に勧告の根本的な改訂を目指していると言われていますし、アメリカでも21世紀の放射線防護の議論が行われています。われわれもこの機会にパラダイムシフトを具体化するべく努力したいと思っています。それを同時並行でこのホームページを通じてお伝えすることが出来ればと考えています。ではまた新しい年にお目に掛かりましょう。

 

 

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