1999.9.1

 
   
  1. はじめに:何故この講座を始めるか
 

 

 多くの人が放射線というと怖いと言います。「何故?」と尋ねると、「それは当たるとがんが出来るし、子孫にも悪い影響が残るというではありませんか」という答えが返ってきます。「そんなことはありませんよ」と言っても、「でも目にも見えないし、痛くもかゆくもないのに沢山当たるとひとが死ぬではありませんか」となかなか納得してもらえません。一般には放射線は何か特別の魔法の仕掛けのようなもので、何が起こるか分からない怖いものと思われているようです。さあ、どうしたら本当のことが分かってもらえるのでしょうか。

 私が放射線とつき合うようになった50年程前には、確かに放射線は分からないことだらけで、レントゲン博士がX線を見つけてから未だ50年余りですから、それもやむを得ません言い訳をしていました。しかしそれから50年経ちました。今では多くのことが分かってきて、何が怖くて何が怖くないか、はっきりしています。今では医学上の多くのことが分子のレベルで説明出来るようになりましたが、30年程前に私が医学部で放射線作用の講義をしていた時には、これは医学の中で、分子と細胞と個体とを一つの言葉で説明できる論理的な学問であると言って自慢していたものです。

  しかし、学問というのは面白いもので、一度分かったと思っていたものが、更に掘り下げて調べていくとまた新しい疑問に突き当たるということで、それをまた解決していかなければならないというように展開していくものです。丁度地動説から天動説へ、あるいは古典力学から量子力学へと展開していくように。幸か不幸か私はこの放射線作用の研究の歴史の中に身をおくことになったのです。そうして今ではこの世の中から消えていく日も近くなりました。そこで初めに書いた疑問、一体放射線の何が怖くて何が怖くないのか、に挑んでみて皆さんへの置きみやげにしようと考えた次第です。

 私は兼ねてから“放射線は両刃の剣”で、がんを作るが、また治しもする、と言ってきました。そこで、ここでは、放射線障害のことだけでなくがんの治療や予防のことも一緒に考えていきたいと思います。時にはもっと脱線して長寿学まで拡がるかもしれませんが、その方が読者にも喜んで頂けるのではないでしょうか。大体の筋書きは最初にお示しした通りですが、こんなことですので、多少の脱線は許して下さい。

 私は73歳の時に思いついてパソコンに初めて手を触れました。それまでは総て秘書まかせだった訳です。従ってこれを自由自在に使いこなすことはとても出来ません。しかし、折角インターネットを使うのですから、単に本の代わりにパソコンで読むといのでない、何か工夫をしてみたいと思っています。その知恵は逆に読者の皆さんから頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

 


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