2012.6.2
 
Books (環境と健康Vol.25 No. 2より)

 

岩槻邦男・堂本暁子 監修

災害と生物多様性−災害から学ぶ、私たちの社会と未来


生物多様性 Japan ¥ 1,600 +税
2012 年 2 月 1 日発行 ISBN978-4-903295-54-0 C0045

 

 

 本書は、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災の救援渦中の 7 月 10 日に「生物多様性Japan」の主催で開催された、「災害と生物多様性フォーラム」の内容をまとめたもので、本フォーラムから 7 月 13 日に環境大臣宛てに手渡した、「提言書、生物多様性に配慮した復興への取り組みについての緊急アピール」が巻末に掲載されている。災害直後、人々の目は主として、当面の生活を支える人工的基盤整備と経済の復興に向けられたが、本書は、地球生物の一員として、生物多様性の視点からの問題提起である。

 本文は 3 部に分けられ、(1)被災地の生物の多様性への影響、(2)災害からの暮らしと自然の復興、(3)自然界の文化財としての博物標本の再生が取り上げられている。(1)では地域復興のための人間共有財産としての生態系の再生が論じられ、その 1 例として海岸防災林の果たした津波軽減効果がある。(2)では、暮らしの復興に際しての女性の視点の取り込み、三陸海岸遊歩道の整備など自然共生社会の在り方、被爆動物への対応、現代の里山里海再興の地域レベルのシナリオなどが示されている。(3)では、全国の自然史系博物館ネットワークを通じた被災標本の救援活動の中で見直された、生物多様性を基盤とした最良の証拠としての自然史資料標本の文化財としての重要性が示されている。本書の随所には、大震災直後の臨場感あふれる実体験が記述されていて、今後の震災復興の道筋に貴重な一石を投じるものである。

 

山岸秀夫(編集委員)