2001.1.1
 
「環境と健康」Vol.13 No.6 Topics

高自然放射線地域住民の健康調査(中国1979−95)
菅原 努
 

4. リスク解析

 線量について今までに得られた総てのデータを総合し、不足しているところは妥当と考えられる推定値を用いることで対照群を含めた総ての住民の一人一人の全放射線量(宇宙線、内部被ばく、外部被ばくの総てを含む)を計算してそれを線量別に4群に分けました。各群の固形がんによる死亡率を求めそれからその各群ごとの相対リスクを求めたものが表5です。これは未だ計算の途中に、例えば内部被ばく線量は高自然放射線群で一定の値を用いるなど、幾つかの仮定を含んでいます。今後これを順次実測値で置き換えていくことが必要ですが、今までの殆どのリスク推定が余分の放射線についてだけについてのものであったことを考えると、今後すべての放射線を念頭において放射線防護を考えていく上でそれなりの意味があるでしょう。

表5 線量別固型がん相対リスク

線量範囲(mSv
 症例数
相対リスク
95%信頼限界
0-99
142
1(基準)
-
100-199
261
0.83
0.65-1.06
200-299
211
0.98
0.76-1.26
300-399
263
0.90
0.68-1.18
400以上
82
0.66
0.45-0.98

 

 相対リスクは0から99mSvまでのものを1としたときに、ばらつきはありますがみんな1より下にあります。原爆被爆者では固型がんの相対リスクは1Svで1.40ですから、自然放射線の場合はこれより小さいと言えます。すなわち一回大量 照射である原爆の場合のデータをそのまま外挿して用いるのはリスクを大きく見積もりすぎであることを示唆しています。しかし、これから放射線によるがんリスクの増加は見られないと言いたいところですが、統計的な変動の為に増加はないと断言は出来ません。

→ 5. 考察