1999.9.28

 

  5) アルコール
 

 

 がん予防の立場からは、“ひとにとってアルコールは生理学的には必要はないし、しかも習慣性の薬品である”ということになります。 世界に国により地域によって、アルコールの摂取量は違います。ある国では禁酒により0か0に近く、反対に平均で全エネルギーの10%もアルコールで取っている国もあります。国際がん研究機関の分類ではアルコールは発がん物質とされています。しかし、がんの部位によってその関連は異なります。

 アルコールが何故がんを作るかについては、いろんなことが考えられます。先ずお酒の中にはアルコール以外にいろんな発がん物質、ニトロソアミン、多環芳香族化合物、マイコトキシンなどが含まれている可能性があります。またお酒のメチールアルコールは体内で分解されてアルデヒドを経て酢酸になりますが、その代謝が遅いとアルデヒドの濃度が高くなり、これが発がんを促進することが考えられます。この代謝には人によって違いがあるので注意が必要です。高濃度のアルコールによる粘膜の傷害も問題です。

 しかし、他方少量のアルコールは冠動脈疾患のリスクを減らすと考えられています。ただし、その量は精々一日一杯までです。この一杯というのは大変漠然としていますが、実際その基準は国によって違うようで、強い酒(蒸留酒)で英国では25ml(8g)、米国では45ml(14g)とされています。そこは適当に判断して下さい。

証拠
がんリスクを減らす
関係なし
がんリスクを増す
確信出来る   膀胱 口腔と咽頭、喉頭、食道、肝
可成りの   胃、膵臓 大腸、直腸、乳腺
可能性あり   前立腺、腎臓
不十分      

註1: 関係なしに挙げたがんについては、それぞれ疫学的な研究があるが、それが関係なしを示しているということである。その中で上のもの程研究が豊富にあるということである。例えば、膀胱がんについては、2のコホート研究症例対照研究19のうち18が全く関連を示さないということである。
註2: 口腔と咽頭については11のコホート研究、19の症例対照研究が、食道については10のコホート研究、21の症例対照研究があり、アルコールとの強い相関をしめしている。さらに喫煙者ではリスクは一層高くなる。喉頭については少し研究が少ない(コホート6、症例対照17)が同様の結果である。
註3: 肝については19の症例対照研究と18のコホート研究があり、アルコールの多量、長期の摂取が一次肝がんのリスクを増すことを示している。これは多分肝硬変を経てのものであろう。
註4: 大腸、直腸につては11のコホート研究、20の症例対照研究があるが、結果は上のものほど決定的ではない。一日30〜50gのアルコールを続けるとこれらのがんのリスクが1.5〜2.0倍になると計算されている。
註5: 11のコホート研究、36の症例対照研究がなされた。一日20g以下のところでかえってリスクの減るものもあるが、大量ではどうやらリスクの増加がおこりそうである。また動物実験の結果もこれを支持している。大量摂取に限れば将来は一つランクが上がるかもしれない。
註6: 肺がんについては6のコホート研究があり、全体としてはリスクの増加を示しているが、喫煙の影響に比べてアルコールのそれは小さいものである。
 
 
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