2003.1.27
 

 平成15年健康指標プロジェクト講演会要旨

第38回(2月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
免疫系細胞の誕生

桂 義元
(日本大学医学部先進医学総合研究センター,東京医科歯科大学)
 


 私の研究の中心は「T細胞がどのようにつくられるか」ということで,その出発点は造血幹細胞から多様な細胞がつくられるいわゆる系列決定の問題へ行き着く.従来は,赤白血球,T細胞,B細胞の分化は別々の研究グループによって,また異なる実験法で行われていた.したがって,これら系列間の関係については全く考慮されていなかった.私達は,個々の幹細胞/前駆細胞からのT,B,ミエロイド(実験によっては赤血球も含む)系列への分化能を解析できるmultilineage progenitor assay (MLPアッセイ)という実験法を開発し,この方法を用いた研究によって,造血系細胞の分化は以前から考えられていたのとは異なるプロセスをたどることを明らかにした.特筆すべきは,以前からその存在が仮定されていたT,B系列に共通の前駆細胞(common lymphoid progenitor, CLP)は存在が確認されず,T細胞,B細胞,赤血球系列は,それぞれがミエロイド系列に伴われるように分化することが明らかとなった.すなわち,赤血球,T細胞,B細胞がミエロイド系の細胞から独立に進化してきた経緯が造血細胞分化の過程に反映されているものと考えられた.

 胎仔肝臓などでつくられたT前駆細胞は,血流を経由して胸腺へと移行し,そこでT細胞をつくる前にナチュラルキラー(NK)細胞や樹状細胞(DC)への分化能を切り離す.この間に10回以上の細胞分裂を繰り返す.このようなプロセスも,すべて1個ずつの前駆細胞を培養する実験によって明らかになった.これら一連の研究によって,造血幹細胞からT細胞へと至るプロセスに関しては,一通りの知見が得られたものと考えている.

 

 
 

 

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