2001.12.8 revised
 

 平成13年健康指標プロジェクト講演会要旨

第27回(12月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
ヒト細胞培養の臨床への応用の問題点

難波 正義
(財団法人岡山医学振興会 岡山大学名誉教授)
 


 21世紀に発展が期待される医療として,細胞治療,組織再生医療,人工臓器などがある。これらの医療には,主に培養されたヒト細胞が使用されるであろう。ヒト細胞を培養する,そして,臨床に応用するといったことに対して,いろいろの問題点がある。今回は以下の問題点について話す。

  1. 分化した機能をもつヒト細胞の培養は容易ではない。その1例として,培養化されたヒト肝細胞をあげる。薬剤代謝酵素をもつヒト培養肝細胞は新薬開発や人工肝臓の作成に役立つであろう。しかし,P450系の酵素活性を生体レベルで保持する培養ヒト肝細胞は報告されていない。我々が培養化したヒト肝細胞はある程度のP450活性をもつが,生体に比べてその活性は低く,また,ある分子種では胎児型の酵素を発現する。生体中と同程度の働きを持つ培養ヒト肝細胞の開発は,可能であろうか?培地(血清や塩類),サイトカイン,酸素濃度,共存する細胞の存在の有無,細胞基質,など多くの問題の検討が残されている。
  2. ヒト体幹細胞の培養化の難しさ
  3. ヒト正常細胞は無限に増殖しない(細胞老化がおこる)
  4. ES細胞から特定の機能をもつ細胞へ分化させる技術の開発の必要性
  5. ES細胞の腫瘍性の問題
  6. 培養条件下での組織形成の困難性
  7. 人体への応用時におこる免疫学的拒絶問題
  8. 培地の危険性,とくに,動物由来のタンパク質(血清など)の使用の危険性
    血清代用品の開発の必要性
  9. 遺伝子導入細胞の作成
  10. 倫理問題
     本人の同意
     社会的コンセンサス
  11. 政府の規制の問題

 

 
 

 

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