2001.3.3
 

 平成13年健康指標プロジェクト講演会要旨

第21回 (4月21日、14:00〜17:00、京大会館102)
BCG-CWSを用いる癌単独免疫療法;30年の記録

林  昭
(大阪府立成人病センター 癌免疫療法部)
 

     

 BCG-CWS (cell wall skeleton)は、BCG 結核菌の細胞膜の骨格成分で、BCG生菌、ピシバニール(streptococcus pyogenes)、クレスチン(coriolus versicolor)、レンチナン(椎茸の子実体)などとともにBRM(biological response modifier)と総称される癌免疫療法剤の一種である。それらの一部はすでに健保でも採用されてきたが,その臨床効果については、膀胱癌に対するBCG生菌を除いて常に疑問視され、現在ではある種の抗癌剤との抱き合わせでの使用が許可されているに過ぎない。

 BCG-CWSも故山村先生(元阪大総長)が中心となり1970年代から1980年代初期にかけ我が国において広く基礎ム臨床の両面から研究が続けられてきたが、現実にはヒトの癌には効かないと言う烙印を押されて健保採用も見送られ、ある製薬会社の製造プラントも破棄され、1980年代以降は我が国は勿論のこと世界各国でも演者以外誰も癌免疫療法剤として使用するものがいなかったと言うのが実状である。

 一旦見捨てられたBCG-CWSを用いる癌免疫療法が、演者自身の発想に基づいて現在の所最も実用的で効果のある癌免疫療法に生まれ変わろうとしている。その成否の分かれ目になったのが、癌治療の主役を患者自身の免疫力に置くか、従来からの抗癌剤ム放射線療法に置くかで決定的な違いが出てきた。しかも、800人以上の患者を相手に30年に及ぶ演者の単独免疫療法の経験は、近代免疫学に欠落していた初期免疫(innate immunity)の知識の充実と相俟って、BCG-CWSをヒトの癌に有効なワクチンの本命に押し上げると共に、これがより広範囲の外敵にも有効な多機能ワクチンとしての将来性を持つものであることを明らかにしてきた。

 この治療法において最も重要なリンパ節の役割を中心に解説する。

 

 
 

 

平成13年健康指標プロジェクト講演会開催計画に戻る
健康指標プロジェクトINDEXに戻る
トップページへ