2000.11.2
 

 平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨

第17回 (11月18日、14時〜17時、京大会館102)
キメラマウスを用いた組織レベルでの発がん過程の解析
立松 正衞
(愛知県がんセンター研究所 腫瘍病理)
 

     

 腫瘍は単クローン性に増殖すると考えられているが、クローン内における腫瘍細胞 の細胞分化の解析には、幹細胞の分化の多様性を理解する必要がある。キメラマウス の系統特異抗体による解析より明らかとなった正常組織や腫瘍のクローン性増殖単位 を基礎とし、腸上皮化生や胃癌における細胞分化の多様性を見直し、さらに最近話題となっている Helicobacter pylori(Hp)と胃癌の関連を検討する。

1)キメラマウスと組織構築
 C3H とBALBの集合キメラマウスのC3H系統特異抗体による解析より、消化管上皮は 、腺管単位で1個の幹細胞に由来した単クローン性の腺上皮細胞と内分泌細胞により 構成される。

2) 腸上皮化生における幹細胞の多方向性  
 高頻度で認められる不完全型腸上皮化生の多くは、単一腺管内において胃型と腸 型上皮細胞が混在する胃腸混合型腸上皮化生であることが明らかになり、幹細胞の胃腸両方向への分化を示唆している。

3)発がんは前駆細胞
 胃癌は原則として、単クローン性増殖だが、腺上皮細胞または内分泌細胞のどちらかに分化能力が限られた前駆細胞と考えられる。

4)胃型胃癌ならびに腸型胃癌と組織発生
 胃癌は分化型も未分化型腺癌も、それを構成する癌細胞の表現型より、胃上皮細胞 型と腸上皮細胞型に分類される。初期の胃癌は、胃型癌細胞を主体として構成され、発育進展にともない腸型癌細胞が出現し、腸上皮化生を前がん性変化とする必要性 の無い事を示している。

5)胃発癌過程におけるHelicobacter pylori(Hp)の役割はプロモーター作用
 我々は、化学発がん物質を用いたHp感染スナネズミ腺胃発がん実験モデルを確立し 、Hpの胃癌発生促進作用ならびに除菌による抑制効果を明らかにした。一方、Hp 感染のみで発がんするという報告もあるが、誘発された病変は、幹細胞由来の再生性変化であることが明らかとなった。

 

 
 

 

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