第36回「いのちの科学」例会  (終了)

    日 時:2011年1月15日(土)14:00〜

    場 所:パストゥールビル5階 会議室((公財)体質研究会)

     14:00〜15:00  委員会
     15:00〜17過ぎ  話題提供

    話題提供者: 森本幸裕先生(京都大学地球環境学堂教授)
      
都市での生物多様性

要旨:国指定の名勝、平安神宮神苑の池にはイチモンジタナゴという魚が生息しています。これはかつて琵琶湖にたくさんいてボテジャコと親しまれたタナゴの1種です。疏水の流れにのってやってきた稚魚が住み着いて、世代を重ねているとみられます。この魚は今や琵琶湖では絶滅危惧種なので、庭がレフュージ(避難場所)となっているわけです。これは、都市で人間が手を入れた自然も捨てたものではないことを示しています。逆に都市ならではの文化と生物多様性の関わりを再考するところから、地球環境の危機への「賢い適応」にも示唆が得られそうに思います。なぜ、都市と生物多様性なのか。それは以下の4点に整理できるかと思います。

(1) ハビタットとしての都市の意義:都市にも野生動植物が生息していて、時には都市的な営為が絶滅危惧種を含む生物の生息を支える。

(2) 特定の生息環境へのインパクト:都市はその立地条件には共通性が見られて、我が国では氾濫原が最もその影響を受けています。大阪府で絶滅した植物84種のうち、半数が湿地のものです。だから、都市の立地条件を生息場所とする種の存続に関して、都市には責任があって、都市デザインは大幅な見直しが必要です。

(3) 生態系サービスの利用:生態系・生物多様性の機能(生態系サービス)を生かした都市デザインが、世代を超えた安全性や豊かさにつながり、健全な人間生活に貢献するとともに経済的でもあることへの認識が高まりつつあります。また、都市内の身近な自然は、その恵みを享受する市民にとってはアクセスしやすいという利点があります。

(4) エコロジカル・フットプリントの改善:都市は本質的に都市域以外の生態系・生物多様性とその恵みに依存した存在なので、その依存度(フットプリント)をできるだけ小さくすることが地球の生物多様性の保全に貢献します。

ブラジルの元クリチバ市長で「環境都市」クリチバの立役者でもあるJ.レルネル博士の言葉「都市は問題ではなく、解決である」をかみしめる必要があるのではないでしょうか。

「環境と健康」25巻1号に掲載予定

出席:栗原、シュペネマン 、清水、奈倉、篠山 、今西、山岸、内海

客員:

「いのちの科学」活動(実施記録)に戻る