1999.7.7 revised.
 
ハイパーサーミアの歴史
 

 

 熱を癌の治療に用いる方法はインドの古い文献である「ラーマーヤナ」に、またヨーロッパではギリシアのヒポクラテス(400 B.C.)やローマのガレン(200 B.C.)などにその記述がある。近代的な意味でのハイパーサーミアにうつるきかっけを作ったのは1866年のドイツの医師W.ブッシュの記述にあると考えられる。彼は顔に生じた肉腫 が丹毒による2回の高熱で消失したことから正常体温以上の温度が選択的に癌細胞を殺すのに使えるのではないかと提案した。その後アメリカの医師 W. B.コリーが細菌毒素を使った人工発熱で癌を治そうと試みたり、温水灌流やヂアテルミーによる加温などが散発的に試みられた。

 しかし、第二次大戦後の癌治療は、化学療法への期待と、高エネルギー放射線による放射線治療の成績向上が著しく、欧米でもわが国でもハイパーサーミアが大きく取り上げられることはなかった。1970年代に入って培養細胞系での温熱の放射線作用の 修飾などが注目されるようになり、1975年にワシントン D. C.で温熱と放射線による癌治療についての最初の国際シンポジウムが持たれ、これを契機に欧米およびわが国でハイパーサーミアが癌治療の新しい柱として研究の対象として取り上げられるようになった。国際シンポジウムも第1回はわずか70名程度の参加者にすぎなかったが、わが国で開催した第5回 (1988年) では800名余、アメリカでの第6回 (1992年) でも600名余の参加があった。第7回ローマ (1996年) につづき、次の第8回は日本を中心とするアジア ハイパーサーミア学会の支援のもとに、2000年にソウルで開催された。


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