[English] 

   
 

 平成22年度 事業報告書

 

(公益財団法人としての最初の事業年度分)
(平成22年9月1日から平成23年3月31日に係るもの)

  I  公益事業

   

 1.調査研究事業

   
(1 ) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究
   
 

 本財団は、中国広東省に存在する高自然放射線地域(HBRA)に注目し、中国の研究者との共同研究により、地域住民の健康に及ぼす自然放射線の健康影響調査(疫学調査、線量調査及び染色体異常調査)を実施してきた。また、中国とは生活様式、生活習慣が異なり、中国より高い自然放射線線量を示すインド・ケララにおいても同様な調査を行っている。なお、イラン・ラムサールにおいても調査・研究を実施していたが、国際情勢の変化により研究活動が困難になったため平成21年度、調査・研究を中止した。
 本事業年度は、中国・インドにおける調査・研究をさらに継続し、データの蓄積を図ると共にコホート内の小集団について症例・対照研究を実施した。
 このうち、中国におけるコホート調査及び交絡要因研究では、2002年12月31日現在の生存者を確認し、被験者名簿を作成した。また、調査地域におけるがん発症率/死亡率に関する情報の収集を行った。白内障スクリーニング調査については、放射線被ばくと白内障の発生に関わる交絡因子調査に使用する質問紙を作成し、これを使用した予備調査を行った。また、スプリットランプを使用した白内障の予備調査を実施した。その結果、HBRAで後嚢被膜下白内障のリスクが増加の傾向にあることが示唆された。これらの結果に基づき、白内障調査の準備を行った。また、2008年9月に採取した血清試料を使用して副甲状腺ホルモンの血清分析を行った。
 インドにおける疫学研究としては、がん発生率及び死亡情報の収集を行い、2009年までのがん発症及び2010年までの死亡に関する情報の収集が完了した。移住調査については、コホートIについて調査が完了し、現在、コホートUについての調査が進行中である。甲状腺研究では、甲状腺結節の発症と放射線被ばくの関係を調べるため、全コホートより18年以上の居住歴をもつ成人女性を選出し、甲状腺ホルモンの測定を開始した。また、これと合わせて白内障の予備調査を開始した。
 染色体研究(インド)については、HBRAとCAに住む30〜65歳の女性を選び、試料の末梢血を採取した。これらの試料について、分裂中期細胞の分析を行うと共に、被験者の蓄積線量を推定するための解析を実施中である。
 線量測定研究については、中国では試料の収集、U-Th-Ra-K比率の測定、環境のγ線分光測定を含む線量測定を行い、ボクセルモデルを使用した臓器被ばく線量の推定を行った。結果は2011年の夏までに得られる予定である。インドにおいては個人被ばく線量測定のため、選定した家庭に線量計を設置した。
 その他、2010年11月26日よりインド・ムンバイにて開催された第7回高自然放射線及びラドン地域に関する国際会議に合わせ国際ワークショップを企画し、2010年11月20日・21日に、体質研究会とインド・RCCとの共催でインド・ニンダカラにて「高自然放射線地域住民の健康調査に関するワークショップ」を開催した。

 

(2 ) 放射線リスク評価に関する調査
   
 

 本財団は、1984年に放射線リスク検討会を組織して以来、放射線のリスクに関心を持つ専門研究者を集め、放射線リスクについての人々の理解を得る方策につき、調査・研究を進め報告を行ってきた。本事業年度には、1)わが国における原子力・放射線関連の教育の現状と問題点、2)放射線・原子力関連の国際機関の動向、3)放射線と発がんリスク、4)新世代型原子炉の展望と安全性、5)日本における原子力の社会認識の現状と問題点といったテーマについて、調査研究を行った。その結果については、リスク検討会委員会メンバーを中心とする下記研究集会で報告・討議を行い、それをもとに調査書としてまとめ、関係者に配布した。研究成果の一部はホームページに掲載予定である。

 
   
1)

第1回放射線リスク検討会調査研究発表会
(平成23年1月26日(水)〜27日(木) 京都大学楽友会館1階会議室)
テーマ:わが国における原子力・放射線関連の教育の現状と問題点
テーマ:放射線・原子力関連の国際情勢報告
テーマ:放射線と発がんリスク

2)

第2回放射線リスク検討会調査研究発表会
(平成23年2月5日(土)〜6日(日)京都大学百周年時計台記念館会議室W)
テーマ:新世代型原子炉の展望と安全性
テーマ:日本における原子力の社会認識の現状と問題点

   
   

2.アイバンクの運営

   
 

 京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、本事業年度は次の事業を行なった。

 
   
1)

献眼の受付業務
本アイバンク登録者から献眼者5名、摘出眼10眼あり、この内6眼の角膜移植があった。

2)

眼球提供者の登録業務
本事業年度26名の登録者を得た。

3) 啓蒙・啓発活動
登録者を少しでも増やすため次の啓蒙・啓発活動を行う。
ア. 機関誌「愛の光」を1805名の登録者に送付した。
イ. 京大関連病院(京都桂病院外7病院)等へのポスター・パンフレットの設置・補充を行った。
ウ. 百万遍知恩寺の「手づくり市」において、11月・12月の2回、毎回1,500部のパンフレットを配布した。
   

3.「いのちの科学」の研究・普及

   
 

 平成17年度から継続している「文理一体となった多面的ないのちの科学」の研究に引き続き、本事業年度から男性中心の研究会を改め、女性からの視点、宗教の関わりなど、より広い視野に立つ「共に生きる」をテーマとした「いのちの科学」の研究を行うため下記の事業を行った。

 
   
1)

市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を2回開催した。
第18回いのちの科学フォーラム “宇宙と生命の歩みと放射線”
 (平成22年10月22日(金) 京都市 京都テルサ西館・3F第一会議室)
第19回いのちの科学フォーラム −菅原 努先生追悼フォーラム−
ガイア・メディスン“からだ・こころ・自然とのつながりを目指す医療”
 (平成23年2月11日(金) 京都市 京都大学医学部芝蘭会館・稲盛ホール)

2)

委員を中心とした例会を開催した。
第33回:平成22年9月18日(土) 話題提供 伊東隆夫 京都大学名誉教授
 “木の文化の科学 −シルクロードと木材−”
第34回:平成22年12月18日(土) 話題提供 坂本文夫 京都学園大学バイオ環境学部教授
 “日本ミツバチの不思議な生態と魅力”
第35回:平成23年1月15日(土) 話題提供 光谷拓実 大学共同利用機関法人人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 研究推進戦略センター客員教授
 “年輪年代法と古文化財への応用”

3) 季刊誌「環境と健康」を発行した。
Vol.23  No.3(秋号) 平成22年9月1日発行  1,100部 152頁
No.4(冬号) 平成22年12月1日発行 1,100部 152頁
Vol.24. No.1(春号) 平成23年3月1日発行  1,100部 138頁
配布先 会員470部(年会費3,000円)、市販用70部、贈呈496部(内全国図書館関係142部)、保存等64部 計1,100部
4) シリーズ「いのちの科学−共に生きる」全5巻の刊行について、著者及び内容等の企画を固めると共に、出版業者の選定を始め、(株)ミネルヴァ書房を候補とした。
   
   

4.放射線照射利用の促進

   
 

 放射線照射技術は工業、医療、農業など多くの分野で使用されているが、その利用の実態は一般市民には、全くといっていいほど知られていない。そこで、本事業では、市民の放射線に関する認識を高め、また、放射線の利用についての理解をいっそう深めること、さらに、放射線のさらなる利用の促進とその範囲の拡大を図ることにより国民生活の利便向上に資することを目的に活動を展開している。本事業年度に実施した事業の大要は以下の通り。

 
1)
ニューズレターの発行:放射線の基礎知識をはじめ、放射線の理解に役立つ情報、各専門分野の最新情報などを中心としたJAPIニューズレターVol.13 No4、5、6をそれぞれ平成22年10月、12月、平成23年2月に発行した。
2)

大会・講演会の開催:平成23年1月28日(金)、京都私学会館にて第2回講演会(公開)を開催した(講演:獣医分野での放射線利用について、日本の現状と将来 他3題)。

3) 見学会の企画:平成22年10月1日、関電美浜原発PR館見学と関西電子ビーム新照射施設関連セミナー参加と新施設の見学(大阪ニュークリアサイエンス協会(ONSA)と共催)
4) ホームページによる情報提供・広報活動:放射線照射利用に関する最新情報を提供すると共に既発行分のJAPIニューズレターを掲載、公表した。
5)

他組織との交流:ONSAとの連携・協力体制を推進すると共に、量子放射線利用普及連絡協議会の連絡会に参加した。

 

5.その他

   
 

 調査研究等活動の成果を積極的に社会に還元・発信するために、本事業年度も引き続き次の事業を行った。

 
1)

ホームページ http://www.taishitsu.or.jp の維持管理

2)

癌の温熱療法の普及啓発
 ホームページ上に設けている「ハイパーサーミア(癌の温熱療法)」の維持管理を図り、患者からの相談メールに対応し、温熱療法実施医療機関への紹介等を行った。

 

 

 

 II 収益事業等

   
 

Tの公益事業の実施に伴い、附随的に行う収益事業等として次の事業を行った。

   

1. ナリネ菌製剤等健康食品の発売

 
 (株)ナウカコーポレーションが総販売代理店として市販を行っている、健康食品「ボンナリネ」・「ボンピュアー」・「ビュークレール」・「プレビアスV1」について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続した。
   

2.研究助成並びに奨励事業

 

 本財団の事業目的に適合する研究・調査等を行っている学会や、協会、研究機関等及び個人に対する助成を行った。