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 平成21年度 事業報告書

 

 

  I  公益事業

   

 1.調査研究事業

   
(1 ) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究
   
 

 (財)体質研究会は、中国広東省に存在する高自然放射線地域(HBRA)に注目し、中国の研究者との共同研究により、地域住民の健康に及ぼす低線量放射線の影響調査(疫学調査、線量調査及び染色体異常調査)を実施してきた。また、中国とは生活様式、生活習慣が大きく異なり、中国より高い自然放射線線量を示すインド・ケララ及びイラン・ラムサールにおいても同様な調査を行っている。

 平成21年度は調査・研究をさらに継続し、データの蓄積を図ると共に、コホート内の小集団について症例・対照研究を実施した。

 このうち、中国におけるコホート調査及び交絡要因研究では、2002年までのデータベースが完成し、新たに得られた喫煙のデータなどを用いてがん死亡率を解析中である。また、甲状腺調査を開始すると共に、被験者を対象とした白内障の予備調査を2008年12月に実施した。これら予備調査の結果をもとに60歳以上の500人を対象に白内障に関する調査を開始した。 

 インドにおいても同様の調査を実施した。インドにおいては、調査対象をカルナガパリ地域全体(359,619人)に広げると共に、がん発生率に関する追跡期間の延長を行い、がん発生率及び死亡情報について1990年から2006年までのデータを収集し、コンピュータへ入力した。さらに、2006年以降の死亡とがん発生率の情報収集が継続・進行中であり、死亡情報については2008年までのデータを、がん発症情報については2007〜9年のデータを入力中である。また、コホートIについて移動調査、甲状腺研究と染色体研究を継続中であり、甲状腺調査については292名を登録し、甲状腺ホルモン−T4,TSH,ATG,PTH−の分析を実施中である。また、これらと合わせて白内障の予備調査を開始した。

 染色体研究については、これまで研究の進行が遅れていた点を改善するために、インド側の研究体制を刷新し、インド及び日本の担当者による検討結果にもとづき新しい体制での研究が進行中である。

 なお、イラン・ラムサールにおける調査・研究については、国際情勢の変化により研究活動が困難になったため研究を中止した。

 

(2 ) 放射線リスク評価に関する調査
   
 

 体質研究会は1984年に放射線リスク検討会を組織して以来、主として放射線のリスクに関心を持つ専門研究者を集め、放射線リスクについての人々の理解を得る方策につき、毎年調査・研究を進め報告を行なってきた。

 今年度は、放射線・原子力関連の国際会議の動向、NIMBY問題等をテーマに、それぞれの分野の専門家を中心として調査・研究を行なった。 

 なお、調査結果については、以下の報告会を開催し、内容の検討・意見交換を行った。

  1.   放射線・原子力関連の国際会議の動向について
     (平成21年 8月 7日(金) 京都大学芝蘭会館)
     (平成21年 12月 3日(水) 京都大学百周年時計台記念館)
  2.   科学技術の進歩とリスク問題について
     (平成22年 1月 12日(火) 京都大学百周年時計台記念館)
  3.   NIMBY問題について
     (平成22年 2月 22日(月) 京大会館)

 

(3 ) 放射線照射利用の促進
   
 

 放射線照射技術は工業、医療、農業など多くの分野で使用されているが、その利用の実態は一般市民には、全くといっていいほど知られていない。そこで、本事業では、市民の放射線に関する認識を高め、また、放射線の利用についての理解をいっそう深めること、さらに、放射線のさらなる利用の促進とその範囲の拡大を図ることにより国民生活の利便向上に資することを目的に活動を展開している。平成21年度に実施した事業の大要は以下の通り。

 
   
1)

ニューズレターの発行:放射線の基礎知識をはじめ、放射線の理解に役立つ情報、各専門分野の最新情報などを中心としたJAPIニューズレターを6回発行(Vol.12、No.1〜6、偶数月、A4版、12〜16頁)

2)

ホームページによる情報提供・広報活動:放射線照射利用に関する最新情報を提供すると共にJAPIニューズレターを掲載、公表。

3)

公開講演会・見学会の開催

(1)第1回講演会:平成21年6月26日(金)、場所:京都私学会館
  「放射線滅菌の理論とバリデーション実務」他3題
(2)第2回講演会:平成22年1月29日(金)、場所:京都私学会館
 「最近の放射線利用技術とその応用」他3題
(3)見学会:平成21年11月25日(水)、場所:播磨科学公園都市・スプリング8(兵庫県佐用町)

 

(4 ) いのちの科学の研究
   
 

 平成17年度から継続している「文理一体となった多面的ないのちの科学」の研究に引き続き、今年度から男性中心の研究会を改め、女性からの視点、宗教との関わりなど、より広い視野に立つ「共に生きる」をテーマとした「いのちの科学」の研究を行なうため、委員の交代を行った。教育哲学を専門とする女性学者、基督教倫理学を専門とする学者、老年学・仏教カウンセリングを専門とする学者及び環境生態学を専門とする学者が加わり、下記の事業を行った。

 
   
ア.
市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を3回開催した。

第13回いのちの科学フォーラム
 “画像で病気を探る”
  (平成21年10月31日(土) 京都市
   京都テルサ・東館スポーツセンター大会議室)
第14回いのちの科学フォーラム
 “新型インフルエンザにかからないために”
  (平成22年1月16日(土) 京都市 芝蘭会館・稲盛ホール)
第15回いのちの科学フォーラム
 “われら地球の共生家族―いのちを育む共生の仕組み”
  (平成22年2月21日(土) 京都市 京大会館101号室)

 

イ.

委員を中心とした例会を開催した。

第26回:平成21年4月26日(土) 話題提供 清水 勇 京都大学名誉教授
 “生態学における共生について”
第27回:平成21年5月16日(土) 話題提供 松田一彦 近畿大学教授
  “殺虫剤から見た生物学”
第28回:平成21年6月13日(土) 話題提供 濱野清志 京都文教大学教授
  “気と臨床心理学”
第29回:平成21年9月12日(土) 話題提供 クラウス・シュペネマン 同志社大学名誉教授
  “西洋の自然概念、その歴史と問題点”
第30回:平成21年11月28日(土) 話題提供 奈倉道隆 四天王寺大学教授
  “近代思想と仏教思想―無常・無我・調和―”

 

2.アイバンクに関する事業

   
   京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、次の事業を行った。
 

(1)献眼の受付業務
 今年度は、本アイバンク登録者からの献眼者8名、摘出眼が14眼あり、
 この内8眼の角膜移植があった。

(2)眼球提供者の登録業務
  今年度41名の登録者を得た。

(3)啓蒙・啓発活動

 
ア.

機関誌「愛の光」を1,794名の登録者に送付した。

イ.

京大関連病院(京都桂病院外7病院)等へのポスター・パンフレットの補充、設置を行った。

ウ.

百万遍智恩寺の手づくり市において、5月・6月・7月・9月の4回、毎回1,500部のパンフレットを配布した。

 

3.研究成果の公開事業

   
 

 本財団の活動の成果を社会に還元・発信するために、次の事業を行った。

 
   
(1 ) 機関誌刊行事業
 機関誌「環境と健康」を4回発行した。
 
  Vol.22 No.2(夏号) 

平成21年 6月 1日発行 1,100部

 
  Vol.22 No.3(秋号) 平成21年 9月 1日発行 1,100部  
  Vol.22 No.4(冬号) 平成21年 12月 1日発行 1,100部  
  Vol.23 No.1(春号) 平成22年 3月 1日発行 1,100部  

配布先
  会員 461部(年会費3,000円)
  贈呈 485部、市販用 70部、保存等 84部 計1,100部

   
(2 ) ホームページ「百万遍ネット」http://www.taishitsu.or.jp の維持管理を行った。

 尚、百万遍ネットは平成22年3月末で解消し、4月1日より新たに「財団法人体質研究会」のホームページを立ち上げることとなった。ただし、アドレスhttp://www.taishitsu.or.jp は変わらない。

   
(3

)  癌の温熱療法の普及啓発事業として、ホームページ上に設けている「ハイパーサーミア(癌の温熱療法)」の維持管理を図るとともに、患者からの相談メールに対応し、温熱療法実施医療機関への紹介等を行なった。

 

   

 II 収益事業

   
 

I の公益事業の実施に伴い、附随的に行なう収益事業として次の事業を行った。

   

1. ボンナリネ等健康食品の発売

   
 

 株式会社ナウカコーポレーシヨンを総販売代理店として市販している、健康食品「ボンナリネ」、「ボンピュアー」、「ビュークレール」及び平成22年2月より新たに「PREVIOUS V1」を加えた4商品について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続した。

 

   

III その他の事業

   

1.研究助成並びに奨励事業

   
 

 本年度も、本財団の事業内容に適合する学会や協会、研究機関及び個人に対し助成を行なった。(別記参照)