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 平成22年度 事業計画書

 

 

  I  公益事業

   

 1.調査研究事業

   
(1 ) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究
   
 

 (財)体質研究会は、中国広東省に存在する高自然放射線地域(HBRA)に注目し、1992年以来、中国の研究者との共同研究により、地域住民の健康におよぼす低線量放射線の影響調査(疫学調査、線量調査および染色体異常調査)を実施してきた。また、中国とは生活様式、生活習慣が異なり、中国より高い自然放射線線量を示すインド・ケララのカルナガパリの6地区について、1998年より同様な調査を行ってきた。このうち、インドにおいては、2007(平成19年)年度までに調査地域をカルナガパリ全体に広げ、調査対象人数を38万人に拡大し、これら対象者について、がん罹患、非がん死亡データの収集を行っている。

 今年度は、中国においてはさらにデータの蓄積を図ると共に、コホート内の小集団について症例・対照研究を実施する。また、インドにおいては38万人に拡大した調査対象者について、がん罹患、非がん死亡データの収集を行う。同時に、生活習慣、喫煙を中心とした交絡因子の解析を実施する。さらに、観察結果の信頼度をより強固なものにするため、中国およびインドで得られた結果を、あわせて、解析できるよう検討する。また、新たな調査項目として、中国およびインドの調査地域において甲状腺あるいは白内障などの健康調査を実施する。

 今年11月に予定されている第7回高自然放射線およびラドン地域に関する国際会議(7thHLNRRA)では、開催に参加・協力すると共に、国際誌への論文投稿を積極的に行うなど、本研究の重要性を世界へアピールすることを目指す。

 

(2 ) 放射線リスク評価に関する調査
   
 

 当研究会では1983年以来、放射線リスク検討会を組織し、主として放射線のリスクに関心を持つ専門の研究者を集め、研究会や出版活動を通じて、それに関する認識を深めるとともに放射線リスクについての人々の理解を得る方策につき、様々に検討を進めてきた。

 本年度は、いままでの活動に引き続き、まず、放射線発がんのリスク評価を進めるために、放射線のリスク評価に関する国内外における最近の情報を収集・検討すると共に、最近の低線量放射線の健康影響調査結果をまとめ、放射線評価のための科学的基礎の検討を行う。さらに、原子力、放射線を含む様々な科学技術の進歩にともなって、生ずるリスクの内容と特徴、共通するものを比較抽出し、「リスク」に対する傾向を調査検討する。また、近年、ますます利用の増している医療被ばくを中心に放射線リスク評価における問題点の整理とまとめも行う。最後に、これまで長年にわたり蓄積してきた本検討会での調査結果や成果を集約し、公表するための形式や方法についても検討する。

 

(3 ) いのちの科学の研究・普及事業
   
 

 従来の医学における治療や予防の研究は、要素還元主義に基づく分析と多数の測定結果によって評価されてきた。しかし、それだけでは解決できない現象が治療や予防の上で見られている。

 そこで、要素還元主義を離れ総合的な立場で、しかも科学的に医療や予防の効果を評価する指標の研究開発を平成10年度から行ってきた。しかしこの立場からでは「いのち」を理解することは困難であるとの反省から、平成17年度から委員を交替し、文系の委員も参加して新たに「文理融合」をテーマにした多面的な「いのち」の科学の研究を行ってきた。しかし、文理の壁は厚く、もう少し思考方法を変え委員も交替し、宗教の専門家(仏教とキリスト教)も交えて、より幅広い「共に生きる」を柱とした「いのち」の科学の研究を昨年度から始めており、今年度もこれを継続する。

A.市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を年4回程度開催する。
B.委員を中心とした例会を5〜6回開催する。
C.新シリーズ出版の企画を検討する。

 

(4 ) 放射線照射利用の促進
   
 

 (財)体質研究会は「原子力利用についての理解をいっそう深め、特に放射線に関する認識を高めることが大切である」という立場から、放射線照射の利用に関する知識の普及と新しい分野の広がりを目指して活動している。
平成22年度も引き続き以下のような活動を展開する。

 
   
A.
講演会・見学会の開催:放射線照射利用技術に関する最新情報、特徴ある分野の情報を提供すると共に、一般公衆の放射線照射に関する理解を得ることを目的に、放射線照射に関する知識普及と理解に役立つ情報提供を目指した講演会や見学会を実施する。
B.

JAPIニューズレターの発行:ニューズレターを年6回発行し(A4版、12ページ以上)、放射線および放射線照射の理解に役立つ情報を提供する。また、放射線照射に関する幅広い記事を掲載するなど、記事内容の充実を図ると共に、“みんなでつくる機関誌”の立場で、広く原稿を募集する。

C.
ホームページの充実:放射線の基礎知識をはじめ放射線照射利用の理解に役立つ情報を提供する。また、JAPIニューズレターを掲載する。
D.

他組織との交流:放射線照射利用に関係する団体、学会、業界などとの交流を深め、連携し、広く情報の収集と活動の広がりを図る。また、講演会、見学会など、他機関との共同開催も検討する。

 

2.アイバンクに関する事業

   
 

 京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、引き続き今年度も次の事業を行う。

 

A. 眼球提供者の登録業務、献眼の受付業務を行う。
B. 登録者を少しでも増やすため次の啓蒙・啓発活動を行う。
 イ.京都・滋賀・奈良地区アイバンク関係機関誌の登録者等への発送
 ロ.医療機関等へのポスター・パンフレットの設置・補充
 ハ.「手づくり市」等での啓蒙活動

 

3.研究成果の公開事業

   
 

 調査研究等活動の成果を積極的に社会に還元・発信するために、引き続き次の事業を行う。

 
   
(1 ) 機関誌刊行事業
 機関誌「環境と健康」を年4回[季刊・部数1,100部、各巻120〜160頁]発行する。
 内1,000部は、会員及び関係者に配布する。又100部については、昨年度と同じく、(有)共和書院を発売所として全国の主な医学系書店で市販する。定価一冊800円(税込み)
Vol.23  No.2 を平成22年6月1日に、
 〃  No.3 を平成22年9月1日に、
 〃  No.4 を平成22年12月1日に、
Vol.24 No.1 を平成23年3月1日に刊行する。
   
(2 ) シリーズ「いのちの科学―共に生きる」全5巻の企画と第1巻の発行
   
(3 ) ホームページ http://www.taishitsu.or.jp の維持管理
   
(4 ) 癌の温熱療法の普及啓発
イ. 

ホームページ上に設けている「ハイパーサーミア(癌の温熱療法)」の維持管理を図る。

ロ.

患者からの相談メールに対応し、温熱療法実施医療機関への紹介等を行う。

 

 II 収益事業

   
 

Tの公益事業の実施に伴い、附随的に行う収益事業として次の事業を行う。

   

1.ボンナリネ等発売事業

   
 

 (株)ナウカコーポレーションが総販売代理店として市販を行っている、健康食品「ボンナリネ」・「ボンピュアー」・「ビュークレール」・「プレビアスV1」について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続する。

 

   

III その他の事業

   

1.研究助成並びに奨励事業

   
 

 大学、本財団の研究事業に適合する学会や、協会、研究機関及び個人に対する助成を行う。