4.2 リスク認知調査
 4.2.1 調査項目の検討
 4.2.2 調査の実施
   1)海外の情報 
    2)温泉利用客の意識調査
    3)いくつかの集団に対するリスク認知の意識調査
  




4.2 リスク認知調査
4.2.1 調査項目の検討
 環境レベル放射線に対するリスク認知調査情報として、ヨーロッパなどで継続的に実施されている放射線及び原子力に関する一般市民の意識調査の最新調査結果について、特に生活条件下で利用される放射線(電力供給のための原子力発電も含む)に対するリスク意識調査の結果を選び出し、リスク認知を含む一般公衆の意識を検討した。
 また温泉利用客の意識調査として、わが国における温泉利用者及び温泉利用希望者の意識調査を、温泉に関する一般的な設問に放射線に関連した設問を交えた自由回答によるアンケート調査により実施した。
 更に、リスクに対する意識の異なる複数の集団(放射線専門家、一般公衆、ジャーナリストなど)を対象としたリスク認知調査を、1対1のインタビューに対する自由回答に基づくメンタルモデルアプローチによって解析・検討した。
4.2.2 調査の実施
1)海外の情報 
 「EUにおける放射性廃棄物に関する市民の意見調査」、スウェーデン原発に関する世論調査関係の資料、及び、IAEAによる「原子力問題とIAEAに関する国際世論調査」報告書などを入手し以下の点について内容を検討した。
  a. EUにおける放射性廃棄物に関する市民の意見
  b. エネルギーと原子力に関連するスウェーデンにおける世論の動き
  c. 原子力問題とIAEAに関する国際世論調査 −調査対象となった18カ国についての最終報告−
 このうち、原子力利用におけるスウェーデンで一般市民の原子力発電への対応の変化、また、IAEA調査における原子力発電支持と気候変動の問題との関係などは、人々に対して原子力をアピールする場合のひとつの方向を示すものであるといえよう。
2)温泉利用客の意識調査
 温泉にはその成分に、ラジウムやラドンなど放射性元素を含むものがあり、これを「放射能泉」という。ラジウム温泉は、秋田の玉川温泉をはじめ、増富(山梨県)、池田(島根県)、有馬(兵庫県)、三朝(鳥取県)などが有名で、増富と三朝はラドン温泉としても知られている。この調査では、特に放射能泉として有名な三朝温泉の温泉入浴客を対象として、放射能・放射線という言葉より連想する言葉を聞くことにより、放射線に対する意識を調べた。調査には、三朝温泉宿泊客と対照として、関西在住の一般公衆(消費者団体会員、地方自治体一般事務職等)に対して、質問紙によるアンケートを行った。
 この中で、「温泉と聞いて思いつくことは?」という問に対しては、両群とも“癒し”、“休養“、“くつろぎ”など、全てプラスイメージなものであった。「ラドン・ラジウム温泉と聞いて思いつくことは?」という問に対しては、三朝温泉では、 “体に良い”、“がん治療”、“免疫”など医療関係の言葉やプラスイメージなものが多く、マイナスイメージのものは“放射線・放射能“のみであった。これに対して、対照群では、”血流改善”、“美肌効果”など、プラスイメージのものも見られたが、”がん治療“は見られず、”怪獣”、“放射線”など、マイナスイメージのものも見られた。これに対して、3)「放射線・放射能と聞いて思いつくことは?」という問に対しては、両群共に、放射線利用に関連したプラスイメージのものも見られたが、全体として“原爆”、“危険”などマイナスイメージのものが多かった。
3)いくつかの集団に対するリスク認知の意識調査
前年度作成したエキスパートモデルにもとづき、インタビューによる、専門家および一般公衆の放射能に対する意識調査を実施した。図1はエキスパートによる要因ダイアグラムである。また、図中には各専門分野により異なる会話占有率が高い項目を示した。分析の結果専門家集団においても専門とする領域により放射線リスクイメージは異なることが分かった。また、全分野に共通してみられた現象として、全般的な知識について考慮するより、自分の専門分野についての項目に偏って焦点があっているといえた。つまり、放射線をインプットとし環境放射線レベルの放射線は安全というアウトプットは同一でもそのプロセスは専門領域により異なるといえ、一般公衆への情報提供も専門家の領域によって偏る可能性があることが示唆された。
 一般公衆についてはまだ分析中ではあるが、人工放射線のなかでは、原子爆弾や下視力発電より、医用放射線について高い関心がみられる傾向がみられた。また、環境放射線についての知識はほとんど保有してないうえに興味も低い傾向がみられた。
     






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原子力安全基盤研究  4.2 リスク認知調査