1.食品照射の夜明け前

 平成17年10月11日,内閣府原子力委員会が「原子力政策大綱」を公表し,10月14日には閣議決定されました。本大綱は本文51頁からなり,原子力エネルギー利用はもとより,放射線利用についても,学術,工業,農業,医療活動等の幅広い分野について,種々の観点からの評価と提言が記載されています。そして,それらの中で,“食品照射”については次のように記述されています。
  「食品照射のように放射線利用技術が活用できる分野において,社会への技術情報の提供や理解活動の不足等のために,なお活用が十分に進められていないことが課題として指摘されている」,「食品照射については,生産者,消費者等が科学的な根拠に基づき,具体的な取組の便益とリスクについて相互理解を深めていくことが必要である。また,多くの国で食品照射の実績のある食品については,関係者が科学的データ等により科学的合理性を評価し,それに基づく措置が講じられることが重要である」。
 これらの記述は,わが国の食品照射に関する現状を的確に表すと共に,その打開の方策を提示しています。そして,その評価と提言への措置と対応策の検討を目的として,内閣府原子力委員会は,2005年12月,《食品照射専門部会》を設置しました。
 専門部会設置の主目的は,生産者,消費者等が具体的な取組の便益とリスクについて相互理解を深めるため,また,関係者(行政機関)が適切な措置を講ずるための検討に役立てるために,食品照射に関する現状の把握し,科学的な根拠に基づいて
 認識を深めることであり,リスクアセスメント(食品安全委員会の役割)やリスクマネジメント(構成労働省,農林水産省の役割)を行うことではありません。従って,専門部会は,研究者のみならず消費者,流通業界,産業界,マスコミ関係者を含む10名で構成され,その審議は公開されています。
 専門部会はこれまでに7回開催され,その間,専門家,消費者,関連省庁からのヒヤリング,科学的データの収集と理解,食品照射に関する日本と世界の現状認識に努めると共に,「食品照射についてご意見を聴く会(東京)」を開催して,消費者,生産者等との相互理解を求める際に有益な意見の収集を行ってきました。  


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原子力委員会食品照射部会長 多田幹郎
(中国学園大学現代生活学部)